受験校選びで考えるべき模試の偏差値と合格率

受験がいよいよ近くなって、模試も最終段階に突入してきました。また各受験校の過去問にも取り組み始めている頃でしょう。

XやLINEのオープンチャットなどを見ていると、模試の偏差値や合格率を見て、「第1志望を変えた方がいいでしょうか?」みたいなことを聞いている方も少なからずいます。模試の偏差値が各学校の80%合格率が毎回超えていても不合格になることもありますし、逆に40%程度の合格率でも合格を勝ち取るケースもあります。

持ち偏差値や80%合格偏差値も、模試の合格率も、指針としてはとても曖昧です。もちろん結果的には持ち偏差値に近い結果になることは多いですが、偏差値や合格率にとらわれてもいいことはありません。ここで偏差値と合格率について、あらためて整理してみます。

偏差値は集団の中の位置を示すだけ

中学受験に取り組む親御さんなら、ご存じだと思いますが、偏差値は試験を受ける母集団によって大きく結果が異なります。SAPIXの模試と、首都圏模試では、受験者層が全く異なるので、もしそれぞれの模試で同じ50を出していたとしても同等の学力と見なすことはできません。

SAPIXの受験者層は学力の高い児童が多いので、その中間層(偏差値50)も一般で見たら相当学力の高い児童です。首都圏模試は幅広い層が受験し、SAPIXや四谷大塚などに通い偏差値上位校を受験する予定の児童は受験しないことも多いので、その中間層(偏差値50)は低くなります。

同様に各学校の合格偏差値を見ても、模試によって数字が大きく違います。例えば、法政大学附属の「法政」は、SAPIXだと合格偏差値は「45」ですが、首都圏模試だと「67」になります。SAPIXの偏差値「50」の生徒は楽にクリアしますが、首都圏模試の偏差値「50」の生徒にとっては、かなりの難関です。このあたりのことを解説しているちょうどいい記事が下記にありますので、ご参照ください。

https://dot.asahi.com/aerakids/articles/-/220763

合格率は過去の受験生のポジションで変わる

SPIXや四谷大塚、日能研、首都圏模試などで、各学校ごことに合格偏差値がでています。例えば四谷大塚なら、Aライン(合格率80%偏差値)とCライン(合格率50%偏差値)で各学校の偏差値がでています)日能研ならR4が80%、R3が50%偏差値に相当します)。ふつうに考えると、Aラインの偏差値をクリアしていれば、80%は合格できそうな気がします。

ところがそうではありません。この80%とは何か。10人中8人めに受かった人の偏差値がいくつだったかで表されているだけです。10回受ければ8回受かるということを示しているのではなく、10人中8番目の合格者の偏差値がいくつだったかを示しています(実際には200人の合格者のうちの160番目の合格者などの偏差値になりますが)。

10人中8人目の合格者の持ち偏差値が60なら、Aライン偏差値60の学校になります。しかし入試では偏差値60の学校では、偏差値70の人も65の人も受けます。こういう状況下では、たぶん偏差値70や65の人が10人中8人の合格者になりやすいでしょうし、偏差値60の人は10人中2人の不合格者になるケースが少なくないでしょう。

合格偏差値上の数値はボーダーラインにすぎず、しかも今年もっと成績上位の人がたくさん受ければ、さらに偏差値は上がっていきます。

模試はあくまでも模試でしかない

さらにいえば模試は多くの学校で出されているような問題を平均的に出しているだけで、自分の志望校の状況にあっているとは限りません。

たとえば算数なら、志望校では立体図形はでないのに、模試の算数で立体図形の問題がでてそれを正解したことで点数がよかったりするケースもあります。合格率はあくまでも模試での点数(偏差値)をもとにして出しているだけなので、そこに一喜一憂してもいいことはありません。

80%がでていても安心はできないし、20%だからといって絶望ということはありません。

抑え校と考えている学校の合格判定が80%だったからといって、模試の成績での話であって、合格が確実なわけではありません。毎年志望校の選択の誤りで、全落ちしたりする悲劇が起きていたりします。

逆に模試の成績がふるわなくても、志望校に合格している人もいます。徹底的な過去問対策などをして、Aラインの偏差値に満たなくても合格している例もあります。ただ、現実的には直前の模試でY40程度の偏差値しかとれない人が、Y70以上の開成に受かったりすることはまずありません。

ある程度は持ち偏差値に近い結果がでているのが現実です。

学校の戦略で高偏差値になっているケースもある

もうひとつ注意したいのが、合格者を絞り込んで偏差値を上げている学校もある点です。複数回受験ができる学校で、とくに後半の日程で合格者数を絞っている学校があります。合格者数5名などのごくわずかな枠を取り合う形になります。

この場合は、受験前半で体調を崩した人や、調子がでなかった高偏差値の人も受験してくるので、実質的に難易度が増します。80%偏差値が50程度の学校なのに、この回の合格者は偏差値60以上の生徒で占められる、というようなことがおこります。

塾によって表記は違いますが、四谷大塚などは各学校の偏差値はもっとも高い偏差値が見出しに現れるので、こうした学校は見かけ上、偏差値60が偏差値になっていることがあります。

去年と同じ倍率になるとは限らない

中学受験は、絶対評価ではなく、相対評価です。合格者が100人なら、受験者数の1〜100番までの順位の点を取ればいいのです。300人の受験者がいれば200人が落ちることになりますが、101人しかいなければ落ちるのは1人だけです。

昨年は倍率が2倍なら、それをもとに合格率が判定されますが、今年が3倍に急増することだってあります。それは受験してみないとわからないので(実際には模試の志望校選択である程度判明してきますが)、過去のデータを元にした合格率を過信しないほうがいいです。

また、受験が近くなってくると、偏差値上位の学校を志望してきた生徒が、「そこまでは届かない」と諦めて、一段下の偏差値の学校を志望校に降りてくるケースが見られます。上位偏差値の生徒が降りてくるので、ボーダーライン上の生徒はますます不安定な立場に追い込まれていきます。

受験校選びでは、とにかくより確実な学校を抑えに入れて、まず安心できる環境をつくることが大切になってくると思います。

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